Windows10 WSLのターミナル事情

この記事はkb Club Advent Calendar 2019 2日目の記事です。 https://adventar.org/calendars/4021

Windows10から導入されたWSL(Windows Subsystem for Linux)ですが、その進化は凄まじいです。 2020年中にリリースされるWSL2では現在のカスタムカーネルから素のLinuxKernelに差し替えられ、 Docker等のKernelに強く依存するアプリケーションも自然に動く予定だそうです。

そんな進化に取り残されているのが…

windows wsl terminal 2019 12 04 08 37 11

ターミナルです。 上の図は、qemuでDebianを -curses オプションを与えて起動させ、ログイン後に man ps を叩いて無事崩壊した様子です。 安定性・互換性が低いだけでなく、標準のターミナルは実質 cmd.exe なので機能も不足していると言わざるを得ません。

この記事では、現時点で雑に設定してみてどう動くかを検証していきます。

Windows Terminalを試す

Microsoftも気付いているようで、 Windows Terminal というストアアプリを公開しています。 https://www.microsoft.com/en-us/p/windows-terminal-preview/9n0dx20hk701 タブ・ペイン分割等の機能も有り、少ない機能ながらしっかりと作られている印象です。 ただし、2019年の現時点では色の処理等が不十分で、カラースキームを調整したい自分は実用的では無いと判断しました。

windows wsl terminal 2019 12 04 08 41 27

背景色・文字色等の処理の都合で、重要な箇所が読めなくなっています。 多分、暗いテーマを利用していれば問題にならないと思います。

また、UACを通して管理者特権としてシェルを実行するための機能は無く、一部の操作で成約が有ります。

Fluent Terminalを試す

公式が提供しているものを導入するのが難しいので、コミュニティ開発のOSSに目を向けていきます。

WPFアプリケーションのFluentTerminalを試します。 Chocolateyで利用できるので、 choco install fluent-terminal や、 正しくリポジトリ設定を行えばPowerShellの Get-Package fluent-terminal コマンドから導入できます。 https://github.com/felixse/FluentTerminal

こちらも、明るいカラースキームでの挙動が少々怪しいですが、騙し騙し使っているとやはりcurses周りの処理が不安定です。

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標準のターミナルと同じく、qemuでDebianを起動してmanを叩いた様子です。 こちらも崩壊しており、実用には向かないようです。 また、こちらもWPFで作られている都合上、Windows Terminalと同様に管理者特権としてシェルを実行するための手段が有りません。

ConEmuを試す

個人的に、Windows向けのターミナルの中では最も定評が有ると思っているOSSです。 https://conemu.github.io/

タブやペイン機能が有り、カラースキーム等も概ね正しく扱え、ショートカットキーを含む動作の調整がとても細部まで行えます。 また、cursesや色周りの処理も概ね正しく扱えます。 管理者特権としてシェルを実行するための仕組みも存在します。 事実、PowerShell/WSLのターミナルとして4年ほど既に使用しています。

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ただし、スクロールバッファの処理に多少の問題が有るようで、何かの条件で壊れてしまうとタブを再起動するまでスクロールが行えなくなります。 この壊れた状態では、curses周りの処理も怪しくなり画面をかき混ぜたような状態になります。 構成管理ツールなど、標準出力に変更内容が出力されるツールをよく使うのでこの問題は頻度が低くても致命的です。

また、管理者特権でシェルを起動する事に対応しているものの、タブを開く毎にUAC画面が出るのは少々ストレスでした。

ただ、これらを考慮してもWindowsで最も高機能・安定的なターミナルはConEmuだと考えています。

結局… VcXsrv + gnome-terminal

結局の所、Linuxで広く使われているツールを利用する事で落ち着こうとしています。

LinuxのGUIアプリケーションは、設定を行うことでWSL上でも起動することが出来ます。 Windows上でX-Serverを起動し、WSL上のGUIアプリケーションに接続情報を環境変数で渡す事で実現します。

Windowsでよく使われるX-ServerとしてVcXsrvが有るので、コレをインストール・設定します。 方法は標準的なので割愛します。 https://sourceforge.net/projects/vcxsrv/

そして接続情報をWSLの環境変数に設定します。

echo 'export DISPLAY=:0.0' >> ~/.profile
. ~/.profile

次に gnome-terminal を導入します。 カラースキームはGithubのOSSプロジェクトである Mayccoll/Gogh を使用しました。

$ sudo apt install gnome-terminal
$ bash -c  "$(wget -qO- https://git.io/vQgMr)" # カラースキームの導入

結構時間はかかりますが、完了すれば gnome-terminal コマンドでターミナルが起動します。

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おわり

Windows Terminalの進化に圧倒的な期待…!

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Prometheus+snmp_exporterでIX2105を監視する

前回(IX2105でDS-Liteと接続して爆速インターネットをやる)に引き続き、IX2105の設定を行っていきます。 今回はPrometheusでの監視をやっていきます。

  • IX2105でSNMPを有効化する
  • snmp_exporterの導入
  • カスタムモジュールを定義してsnmp_exporterにPRを投げる
  • Prometheusの設定を行う
  • Grafanaで可視化する

IX2105でSNMPを有効化する

まずIX2105側のSNMP機能を有効にします。 今回はIP制限を行いません。

snmp-agent ip enable
snmp-agent ip community public

手元のLinuxマシンから接続が行えるかを確かめてみます。

$ snmpwalk -v1 192.168.111.1 -c public 1.3.6.1.2.1.1
iso.3.6.1.2.1.1.1.0 = STRING: "NEC Portable Internetwork Core Operating System Software, IX Series IX2105 (magellan-sec) Software, Version 9.7.15, RELEASE SOFTWARE, Compiled Mar 13-Tue-2018 18:18:58 JST #2, IX2105"
iso.3.6.1.2.1.1.2.0 = OID: iso.3.6.1.4.1.119.1.84.14.1
iso.3.6.1.2.1.1.3.0 = Timeticks: (17331617) 2 days, 0:08:36.17
iso.3.6.1.2.1.1.4.0 = ""
iso.3.6.1.2.1.1.5.0 = STRING: "Router"
iso.3.6.1.2.1.1.6.0 = ""
iso.3.6.1.2.1.1.7.0 = INTEGER: 72

snmp_exporterの導入

次はPrometheusからの監視を行いたいので、snmp_exporterのバイナリを適当にダウンロードして試してみます。 デフォルトではポート 9116 でHTTPサーバが起動します。

DL先: https://github.com/prometheus/snmp_exporter/releases

$ ./snmp_exporter &
$ curl localhost:9116/snmp?target=192.168.111.1
$ curl localhost:9116/snmp?target=192.168.111.1&module=if_mib  # 同じ意味(モジュール名を明示的に指定)

すると、こんな調子でつらつらとメトリクスが出てきます。

# TYPE ifHCInOctets counter
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet0",ifIndex="1",ifName="GigaEthernet0"} 1.5119176458e+10
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet0-Multiplexor",ifIndex="3",ifName="GigaEthernet0-Multiplexor"} 1.5119176458e+10
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet0.0",ifIndex="355",ifName="GigaEthernet0.0"} 1.5119176458e+10
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet0.0-LAN",ifIndex="13",ifName="GigaEthernet0.0-LAN"} 1.5119176458e+10
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet1",ifIndex="2",ifName="GigaEthernet1"} 5.20355025575e+11
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet1-Multiplexor",ifIndex="4",ifName="GigaEthernet1-Multiplexor"} 5.20355024179e+11
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet1.0",ifIndex="356",ifName="GigaEthernet1.0"} 5.20355024179e+11
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="GigaEthernet1.0-LAN",ifIndex="14",ifName="GigaEthernet1.0-LAN"} 5.20355024179e+11
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="Tunnel0",ifIndex="223",ifName="Tunnel0"} 9.327241604e+09
ifHCInOctets{ifAlias="",ifDescr="Tunnel0.0",ifIndex="726",ifName="Tunnel0.0"} 9.327241604e+09

適当にSNMPの代表的なメトリクスをexportしてくれます。 gauge, counterとかの区別も付いていてすごいですね。 ですが、プライベートMIBに含まれる機器特有のファン回転数・筐体温度等のメトリクス情報は取得できません。

IXの場合は、以下のURLに取得できる情報の一覧が有りました。 温度・ファン・CPU使用率・メモリ・IPsec等、面白そうなメトリクスが多数含まれています。 これらを snmp_exporter で取得するためにはモジュールの定義を行う必要があります。 デフォルトでは標準的なメトリクスを取得する if_mib モジュールの他、ベンダー依存の cisco_wlc arista_sw ddwrt keepalived が定義されています。 NEXのIXは定義されていないので、今回は nec_ix モジュールを作ってみましょう。

IXでのSNMP仕様: https://jpn.nec.com/univerge/ix/faq/snmpv1.html

カスタムモジュールを定義してsnmp_exporterにPRを投げる

自分が投げたPRがマージされたので、次のリリースからIXの監視を行うためにカスタムモジュールを定義する必要はなくなりました。モジュール名は nec_ix として公開されています。 https://github.com/prometheus/snmp_exporter/pull/427

どのSNMPのメトリクス値を取得して何のラベルを付けるかは、同一ディレクトリに保存されている snmp.yml ファイルで定義しています。 見てみると、CiscoWLC, Arista, keepalived等のプライベートMIBが含まれることが分かると思います。

https://github.com/prometheus/snmp_exporter/blob/master/snmp.yml

ただ、この1万行を超えるファイルを手で管理しているわけではありません。 MIBの定義ファイルから自動で生成するためのジェネレータが同一リポジトリに有ります。

https://github.com/prometheus/snmp_exporter/tree/master/generator

  1. makeでMIBの定義ファイルを取得する
  2. generator.yml に書かれたルールに従ってMIB定義ファイルを参照
  3. 各メトリクスの名前・種類・説明文などを snmp.yml に出力
  4. snmp_exporterが snmp.yml の情報を使用して、SNMPエージェントが持つ値を取得・ /metrics へ公開

ですので通常拡張を行うときは、 Makefile generator.yml のみ編集すれば良いです。 今回は、 generator.yml に以下のように追記しました。 今回はメトリクスの定義が素直だったので、walkのみ記述すれば適切にメトリクスの取得が行えました。 この定義を行うことで、 picoSystem 以下の picoCelsius picoFahrenheit 等の子のメトリクスが再帰的に取得できるようになります。

modules:
  nec_ix:
    walk:
      - picoSystem
      - picoIpSecFlowMonitorMIB
      - picoExtIfMIB
      - picoNetworkMonitorMIB
      - picoIsdnMIB
      - picoNgnMIB
      - picoMobileMIB
      - picoIPv4MIB
      - picoIPv6MIB

curl localhost:9116/snmp?target=192.168.111.1&module=nec_ix と叩けば、CPU使用率・ヒープ使用率・IPSecの状態・ファンの状態・電源の状態など、面白そうなメトリクスが取得できるようになりました。

Prometheusの設定を行う

スクレイピングの設定を行います。 ポイントとしては、ネットワーク機器のIPアドレスを指定しますが、その機器にHTTPでメトリクスを取得しに行くことは出来ないので、 __address__ ラベルを置換して全てsnmp_exporterにリクエストを送信する必要があります。

設定例はこのようになります。 snmp-exporter.example.com:9116 は、自分で立てたsnmp_exporterのアドレスを指定してください。 moduleには複数指定が出来ないので、屈辱的ですがこのように2つ書くことになります。

scrape_configs:
  - job_name: 'snmp_if_mib'
    static_configs:
      - targets:
        - 192.168.111.1  # ix2105
    metrics_path: /snmp
    params:
      module: [if_mib]
    relabel_configs:
      - source_labels: [__address__]
        target_label: __param_target
      - source_labels: [__param_target]
        target_label: instance
      - target_label: __address__
        replacement: snmp-exporter.example.com:9116  # The SNMP exporter's real hostname:port.
  - job_name: 'snmp_nec_ix'
    static_configs:
      - targets:
        - 192.168.111.1  # ix2105
    metrics_path: /snmp
    params:
      module: [nec_ix]
    relabel_configs:
      - source_labels: [__address__]
        target_label: __param_target
      - source_labels: [__param_target]
        target_label: instance
      - target_label: __address__
        replacement: snmp-exporter.example.com:9116  # The SNMP exporter's real hostname:port.

Grafanaで可視化する

とりあえず {job="snmp_nec_ix"} などでクエリを叩けばざーっと値が出てくるので、ほしそうなモノをDashboardに突っ込んでいくだけです。

Exploreでの表示例。

snmp exporter 2019 07 02 23 39 40

ダッシュボードの設定例。

snmp exporter 2019 07 02 23 37 53

ファンが搭載されているモデルだと回転数などが取れるようになったのですが、IX2105はファンレスなので残念ながら確認できないです。 ホンマか?と思うものの、通信を大量に流してもせいぜいCPUは20%程度しか使っていないようです。 なので、特に温度が上がるわけでもなく暇なグラフになっています… 異常なときに調査できるように貯めておくので良いんですが寂しいです。

おわり

PRも無事マージされたし、IXは安定して動いているし満足です。 VyosをHypter-Vで動かしていたので、WindowsUpdateが発生してネットが定期的に落ちるという心配もなくなりました。

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